ファラデーの知の拠点ブログ〜独学のための学びのネットワーク〜

東京大学大学院教育学研究科で認知心理学をベースとした知識の関連づけに関する研究を行っていました。現在は物理を教えている高校・中学校教員です。読書を中心とした独学するための学びの指針を提示していきます。おすすめの書籍、参考書、問題集などの紹介が中心です。様々なトピックについて記述し、それに関連する本を紹介することによって、とある分野の知識と教養を効率的に身につけることができるガイドラインに、当ブログがなることを願っています。

藤村宜之(2018)『協同的探求学習で育む「わかる学力」〜豊かな学びと育ちを支えるために〜』ミネルヴァ書房

藤村宣之(2018)『協同的探求学習で育む「わかる学力」〜豊かな学びと育ちを支えるために〜』ミネルヴァ書房

 

東京大学大学院 教育学研究科 藤村宣之教授

名古屋大学教育学部附属中学校・高等学校と共同で編著した本です。

 

教育心理学的アプローチで教科教育の学びを分析する本です。

実に面白いです。

 

例えば、皆さんは、先生や友達に質問しに行った時、

「ここの問題がこう分からないんですけれども・・・あ、分かりました!今解決しました、すみません(笑)」

何ていう経験は今までにありませんでしょうか。

 

私は多々ありました(笑)

 

この現象を認知心理学の観点から考えると、

「聞き手としての他者」といい、「他者がいることで自分の説明が精緻化する」

つまり、相手に質問しようとすると、無意識にでも自分の頭の中でどう説明しようか整理をするので、それで知識が他の知識と論理だてて上手く関連づいて、理解できてしまうことがあるんですね。

 

そういった誰しもが何となく感じたことがある、「わかること」のプロセスを、

教育心理学認知心理学発達心理学

の観点から、学術的な言葉で説明している本です。

 

学術的とは言うものの、この本はなるべく平易な言葉で説明していますから、高校生でも理解ができるくらい分かりやすい本となっています。

 

学習の過程において、何となく感覚で考えてきたことが、こうも綺麗に理論として説明されていると、面白くてページをめくる手が止まらなくなってしまいます。

 

そういった「理解するとは何か」や「効率のいい勉強って何だ」

などというような、学習のプロセスや深い理解に興味のある人はぜひ読んでみて下さい。

 

<本の目次>

序章 世界におけるこれからの教育

    ー日本はどこに向かうのか

 

第1章 「わかる学力」と「できる学力」

 

第2章 「協同的探究学習」とは

 

第3章 探究の学びの意義

 

第4章 協同の学びの意義

 

第5章 中学校国語「少年の日の思い出」 

     -人物の心情について理解を深める

 

第6章 高等学校国語「せきをしてもひとり」

     -感情をどう表現するか

 

第7章 中学校数学「文字と式」

     -カレンダーの秘密を探る

 

第8章 高等学校数学「数列」

     -和から広がる世界

 

第9章 中学校理科「細胞分裂

     -瞬間から時の流れを予想する

 

第10章 高等学校理科「酸化還元反応

      -多面的にみる金属の性質

 

第11章 学びの質を高めるためには

      -協同的探究学習の広がりと深まり

 

終章 一人ひとりの学びと育ちを支えるために

 

 

ファラデー