ファラデーの知の拠点ブログ〜独学のための学びのネットワーク〜

東京大学大学院教育学研究科で認知心理学をベースとした知識の関連づけに関する研究を行っていました。現在は物理を教えている高校・中学校教員です。読書を中心とした独学するための学びの指針を提示していきます。おすすめの書籍、参考書、問題集などの紹介が中心です。様々なトピックについて記述し、それに関連する本を紹介することによって、とある分野の知識と教養を効率的に身につけることができるガイドラインに、当ブログがなることを願っています。

【2021年度版】大学受験 物理 おすすめ参考書 基礎 鯉沼拓(2012)『宇宙一わかりやすい高校物理(力学・波動)(熱・電磁気・原子)』学研教育出版

こんにちは!!

東京大学大学院教育学研究科で教育心理学的アプローチで物理教育について研究をしていたファラデーと申します。

 

今回は、

 「【2021年度版】大学受験 物理 おすすめ参考書 基礎 鯉沼拓(2012)『宇宙一わかりやすい高校物理(力学・波動)(熱・電磁気・原子)』学研教育出版

というテーマでお話していきたいと思います。

 

 

鯉沼拓『宇宙一わかりやすい高校物理(力学・波動)(熱・電磁気・原子)』学研教育出版

 

 

 

大学受験向けの高校物理の入門の参考書で、物理の学習のはじめの1冊におすすめで、かつ今後の学習に向けての必須の土台となります。

 

「物理は基礎的な概念の理解がとても重要」という言葉をよく耳にすると思いますが、それは物理教育を研究してきた人間からしても真実です。

 

 

既に何冊か物理の参考書や問題集を進めてしまっているのだけれど、

「なんだかすっきりと理解できていない」

「問題が自力で一向に解けるようにならない」

「公式や解き方を暗記して、それをただ当てはめて解いてしまっている」

などという方も、この参考書を手に取ってみることをお勧めします! 

 

 

普段の学校の物理の授業が分かりにくいなと思う方も、本書を是非手に取ってみて下さい!

 

教員の力量差によって、物理の授業というものは特に分かりづらくなってしまうものです。

 

様々な物理の授業を見学し、かつ物理教育の論文を読んでいてそれをひしひしと感じております。

 

それでは、学校の物理の授業に対して「分からない!」と嘆くだけで良いのでしょうか。それでは時間の無駄で生産的ではありません。

 

そこで、本書『宇宙一わかりやすい高校物理』を用いて学校の物理の授業を「分からない」から「分かる」ように、自分でしてしまえば良いのです。

 

学校や受ける授業の環境はそう簡単に変えられませんが、自分のことなら変えられます。

 

 

物理の受験勉強を始める1冊目は、この本がおすすめです!

 

社会人の方でも、高校の頃は物理がよくわからなかったけど、基本から学び直したいという方におすすめです。

 

 

浜島清利(2013)『物理のエッセンス(力学・波動)(熱・電磁気・原子)』河合出版

 

   

 

が日本ではとても有名ですので、物理と言えば『物理のエッセンス』をやれば大丈夫!というように、いきなり物理のエッセンスから取り掛かる人が多いのですが、


『物理のエッセンス』は、ページ数やコンセプトの都合上、

 

噛み砕いた説明・公式の導出・わかりやすい図などが省かれてしまっています。

 

特に、波動の分野と電磁気の分野は顕著で、『物理のエッセンス』はかなり淡白な説明で、基本が身についていない人が読むと理解に苦しみます。

 

物理のエッセンスの力学までは分かりやすかったのだけれども、波動編や青い方の熱編・電磁気編になったら途端に分からなくなるという人が続出しているのが現状です。

 

「物理のエッセンスは分かりやすくて神!」などと力学編をやっていて発言している生徒が多いので、過剰に初学者の間でも人気になって1冊目に選んでしまう傾向にあると考えています。

 

一方で、『宇宙一わかりやすい高校物理』は、図やグラフをふんだんに用いてかつ文章でも丁寧に解説してあります。

 

 

ページ数が多くて分厚いのではじめは驚くかもしれませんが、心配することはありません。

 

 

どの右側ページも全て、図やグラフなどになっており、ビジュアルで分かるようなページに半分は割いているので、本文(文章)は1冊の半分以下です。

 

 

この、初学者に向けてページの右半分を全て図やグラフにしている思い切りの良さを評価したいです。

 

 

なぜなら、高校物理では、物理現象をビジュアルでイメージできるようになることがとても大切だからです。

 

高校生の間に物理現象をイメージする力を身につけたら、大学に入学して今度は数式を重視し、抽象的なまま議論を進めていく力を磨いていくといったように物理学の学びは進んでいきます。

 

 

東大と東工大の入試問題作成に関わったことのある教授の方々は、

 

「問題文を読んで、どんな物理現象が起こっているのかイメージできない受験生が非常に多い。ただ微分方程式を立式して機械的に計算して答えを出しているだけの答案には丸をつけたくない。問題文の情報から、物理現象をまずは図を描いて的確に捉えられる受験生に入学してきてほしい。」

 

と、5月に開かれているとある学会で漏らしていました。

 

 

『宇宙一わかりやすい高校物理』は、物理現象をイメージできる力をつけるために処方箋となる1冊です。

 

 

物理は基礎を誤魔化さずに理解していることが、学力を後々飛躍的に伸ばす絶対条件になります。

 

この本は、基礎をわかりやすく誤魔化さずに、丁寧に書いてあります。

 

慣れてくると、むしろ説明が冗長でありまどろっこしいと感じ始めるかもしれません。

 

ですが、そのまどろっこしいぐらいが物理には丁度良いのです。

論理に飛躍なく、「物理を人にに分かりやすく説明できるようになる」ことを意識しながら読み進めてみて下さい。

 

時折、分かりやすいキャッチーな具体例を添えて、物理の教員になったつもりで他者に教えることをイメージしながら物理を学ぶと学習効果が飛躍的に上がります。

 

 

表紙やタイトルは胡散臭い感じがするのですが、代ゼミの為近和彦先生が監修していて、クセのない本質を突いた良質な参考書となっています。

 

高校1年のなるべく早い段階から本書を手にとって、高校3年間の物理の学習を充実させて欲しいです。

 

物理のエッセンスなどの有名参考書の前に本書をはさむだけで、物理の学習における挫折者が一気に減り、日本の物理教育の未来は明るくなると考えています。

 

ファラデー